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キリムの染色

 

キリムにとって、「色」は最も重要な要素のひとつです。

色は異なる多くの染料の組み合わせから創り出されます。その色を左右する染料には、自然の素材から得られる天然染料と、19世紀後半から登場する化学染料とがあります。
簡単に染色できて失敗も少ない分、単調でそれだけがはっきりと際立つ化学染料に比べ、単一で純粋な成分だけでは構成されない、さまざまな色の要素を含む天然染料による染色は、独特の複雑な色合いを生むため、やはり高く評価されています。
天然染料によって染められた色は年月を経るほど豊かに熟成し、色と色とが調和し、なんともいえない深みや輝きが生まれます。化学染料ではこの深みを出すことは難しく、褪色が早く、褪せ方にもムラが出たり、にじんだりすることがあります。
染色は、染料の調合、量、土壌の質や気候・天候、使用した定着材や媒染剤、あらゆる要素で仕上がりの色が変わる、予想不能な作業です。調合の内容や量、行程のタイミングも毎回異なり、染色の数だけ異なる色が存在するといってもよいほどです。


主な天然染料

〈赤〉
茜:茜科植物の根
コチニール:介殻虫の雌
紅花:キク科の花の花びら

など。植物ではベリー系の果実や、花、樹皮、根、また地衣類などからも多様な赤が採取される。
紅花は染料としての歴史は古いが、扱いが複雑で、現在ではあまり使われない。
昆虫は他にラック、ケルメスなどがあるが、どれも大量に集めてわずかな染料しか採取できないため、非常に高価。


〈青〉
インド藍:マメ科の植物の葉
ヨーロッパ藍:アブラナ科の植物の葉
インディゴとも呼ばれる青の染料は歴史が古い。インド藍から抽出する青はヨーロッパ藍のものよりも色素がずっと強く、高価。


〈黄〉
玉ねぎや麦わら、セントジョン草、カモミールなど、主にクレセチンという色素を含む植物。
黄色を構成する色素は他にもあり、多くの植物から様々な黄色ができる。茜による赤の次に、黄色の染料の植物は手に入りやすい。


〈茶色〉クルミの皮。
〈ピンク〉赤スグリの実、ラック(昆虫)。
〈黒〉タンニンを含む植物に鉄分を加えて作る。

〈紫〉赤と青の染料から作る。
〈緑〉青と黄の染料から作る。
〈オレンジ〉赤と黄色の染料から作る。プラムの樹皮やヘナの葉なども。


茶色では、染色ではないが、もともと茶色の羊毛も活かされる。
白は、純白なら綿、象牙白色の羊毛も活かされる。



キリムの織り手が好んで染める色は、現地の平原や山の明るく強い日差しに映えるもの、またその生活の中でめったに目にすることのできない憧れの色、などでした。
キリムで最も多く使われているのは赤です。茶色は大地に、青は空や川に、黄は太陽にと自然の中で日々目にすることができましたが、赤は春、平原に咲く花にしか見ることができなかったからです。その憧れの赤をキリムに織り込んで、テントの中でいつも身近に置いたのです。

この様に、色にもさまざまな思いや意味が込められています。

「赤」愛情・幸福・癒しや温かさ、エネルギーをもたらす
「青」清浄・魔除け・水や空
「黄」豊穣・太陽・黄金・富・豊かな生活
「緑」草原・天国・春の喜び
「ピンク」勇気・意志